2017年2月鑑賞記録
さて、2月鑑賞分ですが、基本的にネタバレしながら書いてるので結末を知ってても楽しめるという方のみチラ見くださればいいと思います。
6.マリアンヌ(2016・米)
トレーラーの段階から、そこはかとなくMr.&Mrs.Smithぽいなと思っていて、Mr.&Mrs.Smithが一番大好きな私にとっては、ちょっと苦しい映画だったりする。
マリアンヌはらはらし疲れた...割にオードソックスで拍子抜け。まぁ上手くできてるってことなんだろう。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月10日
フィクションではあるけど男は嘘をつくのが下手すぎるし、女は少し鈍感ぐらいじゃないと幸せになれないと感じました。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月10日
我ながら感想はこの2つに集約されてるな...って今見ても思うんだけど、結局マリアンヌ(マリオン・コティヤール)はスパイなのかそうじゃないのかってずっとはらはらし続けた。マックス(ブラッド・ピット)の視点だから、スパイじゃない証拠を掴んでほしいと思って見る一方で、ドラスティックな結末を望む映画ファンとしてスパイである時の結末が気になっちゃったりして。振り返れば無駄なシーンはなかったなと思うんだけど、結末が気になり過ぎて小説だったらネタバレから読んじゃいそうなもどかしい展開でした。
=つまり、構成として大正解(ただし凡庸)
ということなのではないでしょうかね。
マックスがマリアンヌがスパイかどうか問うシーンがあるんだけど、その少し前に(セリフ忘れちゃったけど)なんとなくそれを匂わせてるし、おそらくマリアンヌはそこで気付いてる。そして愛娘に向けて手紙を残す。死を覚悟して受け入れた段階で色々出来ることはあるし、その方がいいこともあるかもしれないけど、少し鈍感で最期まで気付かないままの方が、幸せだって感じられる時間が長くてより幸せなんじゃないかな?と考えてしまった。この状況下だったからそう考えられたのかもしれないけど。自分が死ぬ方だったらちゃんと準備したいもんね。
ネタバレサイトを覗いて初めてマックスの妹が諜報部員だと知った。じゃなきゃ、「マリアンヌにスパイ容疑がかけられている」なんて秘密を明かすはずないよね、と納得。一方で、対象者から「嘘つくの下手」って言われちゃうのどうよ?
いつもハリウッドの恋愛が絡むものを見てると、え、いつの段階でそこまで情熱的に恋に落ちることが出来るわけ??と男性不信でコミュ障な私は思ってしまうんだけど、海外だとリアルにそんな感じで恋をするんだって。にわかには信じがたいっすよね。
衣装賞にノミネートされてることは今さっき知ったんだけど、それもそのはず、マリアンヌの着ているガウン...というよりナイトドレスみたいな感じなのかな?とっても優雅で綺麗だった。特定班だったら既に買ってるレベル。
7.愚行録
イヤミスの元祖と言われているらしいけど、そこまで嫌な感じはしなかったかな。どちらかといえばビッチが弄ばれて捨てられてすっきり!という感情になった私は性格が悪い。
過去の一家惨殺事件と現在の田中(妻夫木聡)の妹(満島ひかり)のネグレクト逮捕問題が交わる瞬間が絶品。そしてその瞬間に映画の結末が透けて見える仕掛けになっている。
まず、この映画のキャッチフレーズにもなっている3度の衝撃の考察なんだけど(多分見た人全員同じ答えを出すだろう)、
①一家惨殺事件の犯人は妹
②兄も殺人を犯す
③妹の子の父親は...
で、愚行録っていう言葉がすごいはまっているように感じたのは、登場人物それぞれに愚かだなーって感じられるところ。しかもその登場人物が日常のどこに居てもおかしくないところ。まさにタイトル通り。そして客観的に見てるからそう感じるだけであって自分たちだって愚か者なんだろうなって改めて考えさせられただからだろうな。
妹が精神鑑定かけられていて、それが幼少期の虐待から来ているとしたら、その兄だけ何も影響受けてないって考えにくいなと思ってたから、結末は理解できる。ただしミスリードが巧みだった。ストーリー的に、兄が殺人を犯したのって、妹を馬鹿にされたからだと思ってたんだけど、ネタバレサイト見たら当初から妹が殺人犯だって気付いている(なぜ兄は知っていたのかも明らかではないが)人がいないか調べるために取材をしていた、と書かれていて映画からは読み取れなかったなぁ私は。あと妹を内部生に斡旋する夏原さん(田向嫁)の動機がわからん。内部生扱いをされるため?
妹が兄に語るシーン、「あの子は食が細いだけなのよ」とか「笑ってくれないの」とか言うのはネグレクトの結果、そうなっちゃったってこと?てっきり近親者の子供だから障害でも出てるのかなって思ったんだけど、いらない深読みだったかな?(そもそも一代で障害がすぐに出るかどうかは議論の余地あり)
それにしても妻夫木くん、目に光が入らない役ほんと上手いよね。悪人はいわずもがなだし、スマグラーとかもそうだし、最近だと怒りとかミュージアムとか。元がきらきらして爽やかな役が似合うところからきてるからそう見えるのかな?一番初めのバスのシーン、この人は全然いい人じゃないんだなって暗示させるのにぴったりだった。
倫也くんも学生時代と現代で全然印象変わっていて、すごいなーって。大人が大学生を演じているから結構無理があるキャストではあったんだけど、経年変化が上手く外見からみてとれたよ。
時間があったらもう一度劇場で見たいなって思えた稀有な作品。
8.シレンとラギ
ゲキシネだけどこの枠で。
ちょっと待って、新感線で一番好きなんですけど!!!!!!!
新感線でおなじみの役者さんを除いて、全員舞台は初見だったんですけど、映像でお芝居されている方々はお上手!(というか私が舞台してまっせ~!という演技が好きじゃないだけ)舞台専業の方がどうとかではなく、どちらのサイズの演技もできるから、舞台/映像の芝居がグラデーションかかってるみたいに線引きがなくて自然。もちろん発声とかは舞台用なんだけれども。
舞台だと目が足りないってなりがちだけれど、ゲキシネだから観客の視点を合わせやすくしていたので、毒から目が覚めたゴダイがキョウゴクを意味ありげに見つめているシーンとかわかりやすかった。
源氏物語とかその他古典に慣れているから別に近親相姦とか首をとって並べるとかあんまり気にならなかったけど、上演当時は賛否両論あったと。なるほどね。
印象に残ったシーンだけあげるならば、
・ゴダイの教えには全く賛同できない
・ロクダイの教えだって愛することは殺すことってシレンの生き様をそのままスライドさせるって短絡的じゃね?
・なぜゴダイは殺されることを選んだのか
・キョウゴクは信念がある骨太な男とみせかけてただの○○(これ初めから娘に対してのスキンシップが多くて?と思わされてたのはやはり伏線だった)
・生まれながら毒を飲まされ耐性をつけさせられるのに、そうやって育てられなかったラギの血にどうして解毒成分が??
・死んだ後に血液飲ませて生き返らせるってもはやそれ解毒の効能超えてるから!!黄泉返りだから!!
9.たかが、世界の終わり(2016・加仏合作)
抱えきれなくて、twitterに乱投したんだけど、
たかが世界の終わり、映画が好きって人か、作品から何か読み取ろうって思える人にしかおすすめできないなー。フランス映画とくくっていいのか、グザヴィエドランだからと言っていいのかわかんないけど、起承転結がわかりやすく設定された物語ではないから。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
というのも、ほとんど内容のない会話劇で、足を鎖に繋がれて家から離れられないような家族がなんとかそれでもそれぞれの距離を保ってバランスを取りながら生きてきた環境に第三者と言ってもいいような息子がふらっと(重大発表を抱えながら)戻ってくる。そこでそれまでの均衡は崩れてしまう。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
お互いに不満は持っていても心からさらけ出してぶつけることはできなかった人たちが外的要因(人だけど)によって一旦出来上がっていた家族の形を壊さざるを得なくなってしまった。それでもなんとかして保とうと思っていた兄の精神的ダメージを考えると苦しくなるし、
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
そんな兄が理不尽に映ってしまう妹の心情も理解できる。ちょっと不器用だけれど兄弟たちの仲を取り持ちたくて痛々しいほど空回ってしまう母親に同情し、嫁いできたからこそ、そんな家族をどうにかして受け入れなきゃいけないし、可能ならば救いたいという兄嫁の気持ちも。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
ストーリーとして事件は何も起こらないしずっと平坦に続いていくから眠くなってしまう可能性が高いけど、観終わった後にそれぞれの視点から考えるととても面白いし、もう一回観に行ってみようかなってなる。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
でも、ちょっと苦痛に感じるからなかなか行かないだろうけど。
ただ、キャストが豪華中の豪華でだからこそ家庭という小さい環境で物語が成立するというのもあるし、オープニングすぐの曲(Home is where it hurts (Camille))がもうこの世界観を表現しているとしかいいようがなかったから、観てほしいというのもあるんだなぁ。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
ネタバレ感想読んでた時に、家族の名前が全員ヌで終わるのに、主人公だけはそうじゃなかったっていうの見てなるほどなーって。フランス語の命名法はあんまり詳しくないけど、どうなんだろ?気付いたのもすごいし、それだけ聞いても疎外感というかよそ者感が演出されるね。
— 式神遣い (@seamlesspants) 2017年2月22日
あとネタバレになるから書けなかった部分として、鳩時計からリアル鳩が出てくるのって囲い込まれた「家」「家族」からの解放ってことなのかなー?で、最後ルイが出て行った後に鳩が落ちてるのは、ここが死に場所だよって暗示してるのかな。
「次は大丈夫だから」ってバラバラになりかけた家族を前にママがそう言ってくれるんだけど、その時点では、主人公は戻ってくることはないだろうなって思ってたんだよね。あの空気の中で自分の話を切り出せなかったわけだし。でも表情が諦めきった人のそれではなかったような気がして、ちょっと希望を残して終わったように感じた。
グザヴィエ・ドランは私がフランス映画(厳密に言えば違うのかもしれないけど)を克服できるようになった監督だから、アレルギーがある人も見て欲しいな。ただし眠くなるし、内容は重いけど。(おすすめしてるのかどうかよくわからん)
(ちなみにトラウマになったのは小さな悪の華)
10.ララランド
(書くの忘れてたのでしれっと追加する)
アカデミー賞で話題になったからなのか、ミュージカル映画だからなのか、わかんないけど映画館が激混みだった。日本人の習慣にミュージカルが根付いていないというのはもはや過去のお話なのかしら?
ライアン・ゴズリングのキャスティングは意外性のある抜擢だって話しも聞こえてきたけど、世界観に外れてはいなかったんじゃないかなと。ただ、この映画が上映されるって話聞いた時あんまり個人的には響かなくて。サクセスストーリーと恋愛て普遍的なテーマだからなのか、キャスティングの好みなのか...とぼんやり感じながら、音楽は気になるので観に行ったけど、やっぱり内容に関してはうーん。夢を追いかけるような新鮮な日々はもはや記憶の底にこびりついて取り出せなくなっちゃったのかしら...
何の媒体だったか忘れちゃったけど、ハリウッドの昔を象徴するようなバックグラウンドだったらしいから、それは純日本人の私に馴染みがなくて当然だったんだなと納得。ただし、冒頭のハイウェイでの群舞シーンは、ミュージカル好きな方であれば誰でもテンション上がるんじゃないかな?
11.彼らが本気で編むときは、
これ、カップルが実の子じゃない子を預かるというところでチョコレートドーナツと同じような話かなと思ってたんだけど(扱うテーマは似てるか)、パートナーの形って色々あるよね、で終われないのってなんでなんだろう。
マイノリティだから他のマジョリティからしたら受け入れがたいってこと?私自身は嫌味であろうと「変わってる」って言われるのは全て褒め言葉として受け取れるから少数派でいることを苦痛とは思わないんだけどな。それもこれも大人になったからだね。子供の時は辛かったもんね。
同級生の母親が、「一緒にいた人が普通じゃないんだからあの子とは遊んじゃいけません」だったり、実の母親が「あなたが母親になれるわけないじゃない」だったり辛かったな...
これに関しては考えたことがいっぱいあるので別エントリでまとめます。