2018年1月鑑賞記録

1.ブリムストーン / Brimstone(2016年・蘭仏独白瑞英米合作)(←えげつない)
画面のどんよりした感じとか、章立てになってる感じとか、どことなくニンフォマニアックを彷彿とさせる......まぁ、ニンフォマニアックみたく笑いどころがないんだけどね。

つくりとしては、過去と現在進行形の事象が行ったり来たり......個人的にはこのような構成大不得意なのだけれど、この映画はちゃんと見られた。
なぜなら、時間軸が過去だということはわかるんだけど、状況把握するまでにしばらく時間がかかるから。

神の御心のままにが倒錯的になった父親から逃げ出す

逃げて、中国籍ぽい男に拾われて売られて娼館に

仲間と脱走しようと思ったけれど、相方が殺される

相方に成りすまして、身請け先と結婚(そのために舌を切り落とす)

父親が追いかけてきて、彼女が愛している人たちを次々に殺していく

娘と暮らしていたところに警察がやってきて海に身投げ

娘の回想

と時間軸通りに並べ替えるとこういった構成なのだけれど、悲劇というより、因果応報というか巡り巡るということはこういうことなんだなぁーと。

そもそも父親が母親に身体的接触を拒まれることで、その性的対象が娘に移ることがおかしいんだけどね......牧師の妻である奥さんだけがいつまでも神秘的な経験をしたことがない(例えば目の前が光って見えたとか天使が見えたとかそんなん)ことから人としてなってないとむち打ちを行うなどしてるから拒まれるんじゃん......と思ってしまうんだけど。リズからの言葉ではっとしたのかなんなのか、母親はみんなが集まってる時間を狙って教会で首を吊ってしまう。痛々しかった。けど、これで解放されたのか救われたのか、一矢報いたかったのかはわからないけれど、牧師である夫に恥をかかせることができたからちょっとすっきりした。(もちろん現実的に考えれば......とか野暮なことは抜いて考える)
時代もそうだし、宗教観が関係してくるからこの辺りは知ってた方が納得できる部分もあって面白いのかもしれないなと思った。

そういえば、リズは怪我をしてやってきた男2人組を納屋に匿ったりしてたな......不審者ではあったけれど、人を見捨てないというところはちゃんとキリスト教の影響を受けていたのかな。
男のうち片方はリズを女として見てたし、片方は少女で庇護対象として見てたし。リズは後者への気持ちを恋だと自覚していた。けれどその男は父親に殺されてしまった。(この辺りから聖職者とは......?という疑問が尽きなくなってくる)

逃げ出したリズが娼館に身を寄せていたところに、どうやったかはわからないけれど父親が現れる。娼館からの脱走計画を企てていたその日に。友人のエリザベスが父親に殺されてしまい、代わりにエリザベスに成り代わって男やもめのところに嫁ぐ。

身請け先の男と結婚し、娘が生まれた。夫はリズを理解してくれて愛してくれていた。前妻の息子は「母親面すんな」と多少反抗的ではあったけれど、幸せに暮らしてはいた。助産師として働くリズ。頼りにされる一方で、助産師だけで母体と子供両方を救うことは難しかった。子供の頭が大きすぎて産道を通れないとなったとき、家族の意思を尊重して母体を優先して救出するも、いつの間にか現れた牧師に「お前にどちらかの命を選択する権利などない」と脅され、頭をつぶされた子供を受け取った母親は号泣し、子供を殺されたと恨み節を言う男は家に銃弾を撃ち込み、家畜を殺してしまう。

その地に住むことができなくなり、一家は別の場所へ移住する。けれどそこにもやってくる牧師。”リズの一番大切な人”を奪うために夫を殺す牧師。子供たちを守るために夫の父親の元へ逃げようとするリズ。

逃げる途中で落としてしまった銃を拾おうと思った矢先、銃で撃たれてしまう息子。
この反抗的だった息子がやっとリズと協力体制を取ることができてよかったと思っていたのでこの死が一番つらかった......辛いと言えば致命傷を負っていながらも息が残っている父親に「殺してくれ」と言われて代わりに引き金を引いたのはこの息子なのよね。リズには「必要になろうが、銃の扱いは教えないで」と言われていた銃で、その使い方を教えてくれた父親を撃たなければいけなかった。
それにしても、納屋で血まみれになっている父親と義母を見て、リズがやったんじゃないって思ったってことは、リズがどれだけ夫を愛していたかというのは伝わっていたのねー。

逃げた先でも義父を殺されてしまって、”報復”という因果がすっかり怖くなってしまった私。そこでの攻防は娘を盾に取られてしまったりしてもう精神的に疲弊したけれど、何とか牧師を倒して大団円。

とはなるものの、リズはエリザベスとしての人生を生きていた。そこにやってきたのは、以前自分の子供を殺されてリズを代わりに殺してやろうとしていたあの男。娼館のあった街に移住し、リズ(エリザベス)の情報を掴んでやってきた。娼婦が客に手を上げたら絞首刑というその街のルールに乗っ取って、自分を救うために犯したエリザベスの罪によって逮捕される。エリザベスになりすましたことから舌がないという身体的特徴も、罪もそのまま引き継がれてしまう。これこそ因果応報。
そのまま船から海に身を投げるリズ。

 

その後は、娘サムが母親になっているシーンが続くのだけれど、母親が死んで見守ってくれているのか、目の届かないどこかで自分たちを思っているのかはわからないけれど、負の連鎖はもう断ち切られたような暖かい陽の光で満たされている景色で、ようやく報われた気分になって映画を見終えた。
できたら家族4人での未来があったらよかったのに........とは思わずにはいられないだった。

 

父親に反抗して、オランダ語で聖書を読んでいるシーンがあったけれど、あれはなんだったのかしら。母親がオランダ出身というかよそ者だからこそいけなかったということが描きたかったのかな?(他にも気になったことがあったような気がするけどそれは忘れてしまった)

見てからしばらく経つけど、結構詳細なところまで覚えてるので、2018 1Qでは結構衝撃的な映画だったのかも。娼婦は客に手を出すと殺されたり、あるいは相当の罰を受ける(この場合は舌切りだったけど)というのは上下関係、主従関係が成り立ってるとなると避けられないものだけどやるせないね。無界の里みたいに女が男を選ぶ世界になればいいのに。cf.)髑髏城
これだと需要と供給のバランスが崩れたりして成立しなくなるのかしら?

 

2.嘘八百
思ったよりも軽いタッチの映画だったなぁー。
新人の自分の渾身の作品を買い取られて高値で売りつけられてるのを知った元陶芸家と、贋作を掴まされたことを恨みに思っている骨董屋がターゲットの骨董屋と鑑定士に復習してやろうと目論む物語。(記憶に残ってる部分のみの解釈)

前述の物語よりも、その家族に振り回されている部分の笑いの方大きかった気もするけどね。(友近とか前野くんとか家族のキャストが絶妙だった)

終盤の大きな疑問、海外渡航の際に多額の現金を持ち込んでたらおそらく捕まるのでは…?という疑問も最終的に回収されていたからそこはよかった。じゃないとリアリティがまるでなさ過ぎてね........

 

3.5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~ / Mein Blind Date mit dem Leben(2017・独)
このお話、いちいちリアルで(そりゃ実話を基にしてるからなんだけど)微笑ましいやら痛々しいやら、成功を掴んでほしいやらで感情が忙しかった。

この5%というのは、確率の話ではなく、病気で通常の人の95%の視力を失ってしまった青年のお話。
息子が病気であるという事実に徐々に耐えられなくなって他に女を作って貯金を持ち逃げした父親の代わりに働きづめで体を壊してしまった母と、それを支える姉のために自分は働かなければならない。けれど視力がないという話をするとどこも雇ってくれない。それじゃあ視力がないというのを隠して働かなければならない。

ホテルマンとして就職したものはいいもののその研修をクリアしなければならないというところで、恋も仕事もうまくいかなくなって......

この映画を見ながら、LCCの会社と車椅子の男性のトラブルが報じられていたことを思い出したのよね。確かに、会社側も安全な運営をするためにリスクは除外したいだろうし、かといって障がい者だからと言ってLCC利用という選択肢を除外させられるのも納得いかないだろうな。

 

4.悪と仮面のルール
彼がシリアルキラーになったのは大切な人を守るためだった。
確かそんな感じのコピーがあったはず。

中村さん原作は読んでないんだけど、それほど面白そうだなとは感じていなかった。けど、てっぺー監督の初長編だし、危険な関係以来の玉木さんロスの解消のため、観賞。

......うーん。

 

どこかしら脳男と通じるところはあるけど、やっぱり悪を育てようとする男たちが結局一番黒くて悪い。(妄執に取りつかれてる感もあるし)

 

5.伊藤くん A to E

なぜだか「伊藤くん A to Z」だと思っていて、伊藤くん大解剖な話だと思いきや全然違った。(そりゃそうだ) 

A~Eはその伊藤くんの周りにいた女のこと。

A:好きな男のために献身的になることが好かれるための方法だと思っている女

B:伊藤くんになぜか好かれているサバサバ系の女

C:友達に嫉妬してその好きな相手の伊藤くんを奪ってしまう女

D:処女であることが自分のウィークポイントだと考え、手っ取り早く友達に奪ってもらうように頼む女

E:自分がどんだけの器なのか自分の狂った物差しでしか測れない過去の栄光にすがる女

ABCくらいの女が出そろってきた時に、矢崎莉桜センセイがEの女なんだなーということを悟った。
中盤くらいにA~Dの女たちから恋愛相談を受けている相手が同じ相手であることに気付いておもしろおかしく物語の脚本として仕上げていく。この脚本をもって「過去ヒット作を出したことのある脚本家」という評価から脱却したい莉桜先生。

まぁでもその張本人の伊藤くんがA~Dの女の話に加えてEの女として矢崎先生のエピソードを追加したものが若手脚本家のホンとして採用されるという何とも悔しい話。
今までのシナリオスクールでもちゃんと書いたことがないくせに口ばっかりと評価していた男に自分の一世一代の仕事を奪われてしまったのだから。

最終的に二人は顔を合わせて罵り合う(というかお互いの主張をぶつけ合うというニュアンスだった気もする)のだけれど、どっちかがどっちかの意見に迎合するというわけでなかったのが予想外。

ただの一観客とはいえ、私は立ち位置Eの女だから、はたから見たらこんな風に映ってるんだろうなと思ったら恥ずかしいやら心苦しいやら申し訳ないやらで人の振り見て我が振り直そうと思った。

A~Dの女についてもそれぞれ思うことがあったんだけど、これは人によって見え方がきっと違うんだろうなーと思ったからあえて書かないことにする。書いたところで私の醜いパーソナリティが露になるだけだろうから。。

演出かなんか知らんが、ふみのんがタバコ慣れてなさすぎて笑った。吸い込むのができないのはまだしろ、持ち方も咥えるのすら不自然だった。 あれで雰囲気ぶち壊しだったからそこんとこもうちょっとどうにかして。笑

 

6.ビジランテ
クズでダメな兄貴役って南朋さんか新井くんで国内シェア60%くらい占めてる感じしない?

内容については割愛するけど(今さら;(書いてる現在)3月上旬細かい内容覚えてない......)、次男の最終決断が、リアルで冷たくて、でも現実的だなと思ったことを強く覚えている。

まりこ様がキャストだったの知らなかったなぁーあんな嫁いるのかな。
プライドなのか、議員の妻というポジションなのか、何を目的にして生きているのか共通項がなさ過ぎてわからなかったけど、実害がなければあんな風に野心むき出しの女性は嫌いじゃない。

 

7.嘘を愛する女
良くも悪くも期待を大きく裏切ってくれた作品。
何年も同棲してた彼氏に騙されていた(と言ってしまうと大きく表現は変わってしまうのだけれど)ことがわかって、その真相を愛ゆえに突き止めるお話.....とトレーラの時点では思っていた。

実は観ようか観まいか考えた作品なのだけれど、それはおそらく女性目線の映画になるだろうなーと思っていたから。私が女だということもあるけれど(文脈に関係ないとお思いでしょうか?笑)、詮索して得た真実なんて望む結果でない限り受け入れられないんだからさ。血眼になって真実を追う姿なんて痛々しいだけじゃない?......

だから長澤まさみ演じる由加利がバリキャリで、自分が収入の低い研究医を養ってるって思ってて、その自意識の高さにこれまた(伊藤くん以来)うんざり。そう思って働いてるうちはいいけど、他の人にあんな風に話すようになっちゃったら終わりだね。何が終わりかは私にもわかんないけど、美しくないなってことだけ感じた。

まぁ、研究医って嘘ついてたけど、内科医やってて医師免許持ってるんだったらそこまでひどい嘘ってわけでもなくない?と思ったんだけど。
愛ゆえに赦せる......支えて生きていく覚悟?みたいなのを示したかった映画なのかな(これも内容だいたいしか覚えてないけど)と感じたんだけど、結論から言えば普遍的というか陳腐というか当たり前というか、ドラマティックだなとは思えなかった。だってその未来しか私には見えなかったし。

まぁ人間には過去の栄光ややり方を踏襲して未来を創っていく人と、後ろは振り返らずに少しずつ道を創っていく人に大別できるから、そこが私の価値観とは違ったんだろうな、と。

 

この記事、すげー寝かせたな。。