2017年12月鑑賞記録

84.ギフテッド / Gifted(2017年•米)
これ見るとき、特別な才能を持った女の子が、教育ママみたいな人に連れられて高度教育を受けるために育ての親と引き離されそうになるけど、そこはどうにかこうにかして元の生活を守り続けるというお涙頂戴ものだな!と心して見に行ったのだけれど、全然そんなことなくて拍子抜けした。。勝手にストーリーを予測して期待外れだというのもひどい話なんだけど。笑

お姉さんの娘を育てる弟は、若いときからお父さん代わりをしていたので、ちゃんと(?)遊べていないのが不満らしく、土曜の夜から日曜の昼まではメアリーを隣の家に預けて、家には立ち入り禁止にしていた(女を連れ込むため)。ある日、うっかりお気に入りのDVDを自宅に忘れてきたことに気付いたメアリーは立ち入り禁止の時間に自宅に入ってしまい、お泊りしていた元担任の女教師に出くわしてしまう。

 

......んでなんだかんだあって、実の祖母VS叔父で親権を争うことになり、祖母側は遺伝子上の父親を連れてきて親権を託すように仕向けるけれど、結局父親は自分の存在を認知していたのに一度も会いに来てくれることはなかった、自分はそんな存在だったんだという事実を突きつけられて傷付くメアリー。
そんなメアリーを連れ、近所の産婦人科に連れていき、子供が生まれたとき喜び合う人々の姿を見せ、メアリーが生まれた時もみんなで喜んだんだよ、と伝えるフランク。自分が望まれた存在であるとわかったメアリーは他人の家族の中にまぎれて、新しい命の誕生を喜ぶ。

裁判の結果、しばらくの間どちらとも暮らさず、里親に受け入れてもらい、判断できるようになったメアリーに選択させることに。でも、祖母のイヴリンはフランクを遠ざけ、メアリーに強制的に英才教育を受けさせていた。
そこに乗り込んだフランクは1つの論文を母親の前に叩きつける。それは生前姉が完成させていた、ミレニアム懸賞問題のひとつ。
イヴリンは自分の弱さに負け、子供を産み、才能を手放した娘ダイアンを見放していたが、この論文を隠していたフランクに怒りを露わにする。

するとフランクは、
「姉さんに頼まれていたんだ。死んだら公表してくれ、と」
「ダイアンはもう死んだわ」
「姉さんじゃない。......あんた(の死後)だ」(ニュアンス)

言葉が継げなくなるイヴリン。それでも、娘が死んでさえなお守ってきたこの論文を守ることを決意し、大学に電話を掛ける。

里親に預けるときに、「ずっと一緒にいる」という約束を破ったことに怒っているメアリーと仲直りして再び一緒に暮らすようになる2人。
その後、大きな同級生に交じって授業を受け、午後には年の近い子たちと楽しそうに遊んでいるメアリーの姿で映画は終わる。

思っていた話とは違ったんだけど、ほんのちょっとの掛け違いによる諍いって起こりがちだよね、って普遍的な話。ほろりとするシーンもあったしね。
それに、イヴリンに連れられて大学にて数学の能力を示すシーンでは、証明すべき式が間違えて書かれていたため「解けない」と答えるメアリー。なぜ間違いを指摘しなかったのかと問われたメアリーは、「フランクから大人の間違いを正すと嫌がられるからやめろって」と答える。これも大人だから~というわけではなく、ありがち。

つい最近も、介護者の不倫を責めるような報道があったけど(まぁこれは結婚という契約だから仕方ないが)、若者として遊びたい(個人としてのとも置き換えられる)という欲求と保護者として求められる”模範的な”振る舞いのバランスって難しいなって考えさせられた。確かに保護者として受け入れたんだったら、それ相応の覚悟はしててほしいなと思ってちょっと映画見てる時には憤慨していたんだけど、その役割だけに縛り付けるのってどうなのかなとも考えてしまった。親は親らしくいなければいけないというわけではないのかもしれない。ただ、その背中は子供に確実に見られているという意識を忘れてはいけない。

隣人で年上の友人役を引き受けてくれていたオクタヴィア・スペンサーやっぱりすき。子役のグレイスちゃん。表情がキュート。現時点でこの可愛さって今後も綺麗に育ってくれますように。

ネタバレでこの家族という流動的な関係性と、物理的流体の動きを示す(ことができるかを検証する)ナビエ-ストークス方程式をかけているというのを読んで、なるほどなぁーと。

 

85.鋼の錬金術師
ほぼCGなんだろうな、と思いつつ、その映像の美しさにすっかり引き込まれてしまった。
敵方との戦いよりも、この兄弟とそれを取り巻く人たちのストーリーが気になってしまうね。原作を読むのが手っ取り早いとは思うんだけど、この映像としてみたいなと思っているからしばらくは続編を待つことにしようかな。

大泉さんが出てきたとき、なんだか違和感があったんだけど、結局は家族を手にかけて自分の実績にしようとするマッドサイエンティスト(科学者ではないか......)であると判明して、やっぱりなといった感じ。でもどこでその伏線を感じ取ったのかはわかんない。

......そんな端役(というかストーリーに大きく関連しなそうな役)でクレジットの番手早いかな?と無粋な予感だったかも笑。

あのシーンやあのキャラクターを実際誰が演じていたんだろうというのも今後の楽しみにしててもいいかな?

 

86.否定と肯定 / Denial(2016年•英米合作)
これも実話ベースなのよね。お恥ずかしながら、ホロコーストと言われて、あぁ、あれね!とはならなくて。その後にナチスと続くから、大体のことはわかったんだけどさ。

書き方は違うけど、映画「スポットライト」と似たような感じかな、と。国が違えど、信じるものが違えど、人は都合の悪いものに蓋をせずにはいられない。むしろなかったこととして意識を書き換えてる。

イギリスの法廷の仕組みで、訴えられた側が自分たちの正当性を示さなければならないということで、被告側はホロコーストがあったことを証明しなければならない。
そんな仕組みも初めて知ったのだけれど、ホロコーストという歴史的事実などないと主張する人たちがいることの方に驚いた。当然のことながら学者というよりもその国の世論となって襲いかかってくることが怖い。

裁判としては、虐殺が行われていたというよりも、原告であるデイヴィッドが嘘をついていないか、またその人間性に着目して行われていったので、知りたかった部分が紐解かれたわけではなくて少しもやっとしたけれども、差別論者だと結論づけられて裁判としては敗訴になったからまぁそれはそれでよかったかな、と。

でもこれについては知識がなさすぎるのと記憶が遠くなりすぎてしまったので、いつかまた見たいなと思わないこともない。。

 

87.ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 / The Zookeeper's Wife(2017年•捷英米合作)
これも実話ベース。どう感想を持っていいのかわかんないんだけど、タイトル通りのハートフルでピースフルな話ではないのよ。

ユダヤ人が収容されている場所に、生ゴミを動物のエサにするためという大義名分で乗り込む夫・ 。かといってその生ゴミなんかも、ユダヤ人に支給されるほんの少ししかない食料の一部だから、野菜の皮だからといってやすやすと渡すことなんかできない。
その野菜の皮を入れる貨物部分に子供を忍び込ませて、上から生ゴミをかけて外へ連れ出し、一時的に動物園の地下へ匿い、新しい身分証を与えてどうにかこうにか解放する。(それでもバレて射殺された人たちがいたのは痛々しかった)

ドイツ軍に侵攻されて、動物園を運営できなくなった夫婦だから、そうやってユダヤ人を匿って助けることは天から科された使命だと思い、特に夫の方はどんどん注力するようになっていく。

地下に匿っているユダヤ人たちは、自分たちの置かれている状況を分かっているからこそ、とても聞き分けがよかった。それでも子供たちはほんのちょっとの諍いで物音を立ててしまって、それを動物園に出入りしているドイツの動物学者から気を逸らすために様々な手段を講じるアントニーナ。
結局、自分の色気を使う(というか勝手に引っかかってきたって感じもするけど)のが一番効果的でそれを引き続き使わざるを得なくなっていってしまう。それもこれも、大義名分を背負った夫のためとも思って我慢しているのに、あれ(イヤらしく手を洗われている)はどういうことだと憤慨する夫。やるせなく感じたのはアントニーナだけじゃないよ!私だってイラっときたよ!!(行き場のない思い)

......まぁ彼も元々は夫婦の友人みたいな立場から国を背負った立場に立たなきゃいけなかったから可哀想なところもないわけでもない。

それも続けているうちに、とうとうバレてしまうんだけど。(ユダヤ人はもういなくなった後)息子が父親の後をつけたからこそバレるきっかけになったり、んもー!!とハラハラさせられたりすることが多くて疲れちゃった。
お手伝いさんには辞めてもらわなきゃならないというお話をしたときに(匿っているのがバレたからなのか、経済的・社会的な問題だったのかは読み取れなかったけど)夫婦にはよくしてもらったから...と言って秘密を守ってくれそうでほっとした。今まで、地下に匿っている人たちのために「今日は寒いから、スープを多めに作ってくれない?」とお願いしていたのも、もっと前から打ち明けてもよかったのかもね、と思ったくらい。(リスクが大きすぎる)


この物語の最後には戦争が終わり、人々も帰ってきて、動物園は再開する。その時間が待ちきれなくて開演前に列を成している人々。動物を愛でる心や日常が人にも街にも戻ってきたという、戦争以前の明るい太陽の光に満ちた雰囲気に包まれてこの映画は終わる。

なにがよかったって、この庇護欲を掻き立てられるアントニーナを演じているのが、ジェシカ・チャスティンだってこと。つい1か月前に観た「女神の見えざる手」と全然違うじゃん!すごい!!
てかゼロ・ダーク・サーティ、あーツリーオブライフ?ふーん。え、インターステラー?オデッセイ??スノーホワイトの戦士役?まじで!?!?
と無意識って怖い。意識しだすとこんなにいろんな顔がある女優さんだって認識できるのにね。

 

88.蜉蝣峠
ふるちんがこんな憂いのある役なんてとっても新鮮......っていうのが観終わってすぐの感想だったかな。記憶をなくした、想い人に扮した敵役と記憶の中の想い人を近くの都合のいい男に投影してうっかり愛してしまう女。

正直この物語のどこに視点を置けばいいのかわかんなくてね。
どうにかこうにか、愛した男といつかまた巡り合うように村?から追い出す女衆と食堂の盲目のおっさん。

その盲目のおっさんは誰にでも優しいんだ......そっかそっか......と思ってたら、お泪を苦しめた男だとわかって闇太郎を刺しちゃうんだよね。
それまでコメディ要素を担ってた梶原さんがそんなどんでん返しを演出してくるなんて!!

誰にも感情移入できないながらも、蜉蝣峠で待ち合わせした2人が最終選択したんだったらまぁそれでいいんじゃない?って思ってたところの展開。
もしかしたら今生の別れになる展開もあったのだろうけど、別ベクトルから過ぎてまんまとしてやられたなというオチ。

 

立て込み過ぎて12月後半に見に行こうとしてたの4本くらい取り逃がしたな。。