2017年8月鑑賞記録

45.ファウンダー~ハンバーガー帝国のヒミツ~/ The Founder(2016・米)
最近、こんな複雑な思いで映画観ることってなかったな、というのが感想。
とはいえ、観ている最中は暴れ出したいくらい腹が立ちながら観ていました。笑

世界的なファストフード企業、マクドナルド。今はその地位についている。そこまでに持って行ったのは”Founder”こと、レイ・クロック。
でも実際のシステムの考案者で第1号店のオーナーはマクドナルド兄弟。

第1号店を見て、どんなことをしてもその店舗運営に協力したい、と彼は妻に語った。それまでは、売れないセールスマン(でも過去に何度も成功してきたみたいな口ぶり)*1で、マクドナルドのフランチャイズ店への出資を持ちかけても、みんな(過去の営業先や、Clubでの”友人”)に過去に売れなかった商品を持ち出されて馬鹿にされる。妻にも仕事の手ごたえを語ったところで相手にされてないようで、同情票がじゃんじゃん舞い込むような状態だった。

......妻も例のことを軽く見ている群かと思ってはいたけどそんなことなくて、(なぜか)彼を愛し続けている人だった。夫が新しいターゲットになる商品を見つけてきては仕事に没頭し、全く相手にしてもらえなかったからこそ、そんな仕事で嬉しそうにしている姿を見ても素直に喜べなかったんだなって後から思わされた。かといって、自分から能動的に働かなさすぎるだろとは思うけどね。なぜ自分で身を立てることをしなかったのだろう。能力がないなら身につければいいのに。糟糠の妻というだけでは、ずっと連れ添っていきたいとは思えない...のだけれど。婚姻ってそういう契約だとは思うのだけれど、他にいい案件が見つかったらそっちに乗り換えたいっていう気持ちは理解できるからなぁ。
働かなさすぎたとは言ったものの、馬鹿にされた夫を庇ったり、新たにオーナーとなりたい夫婦(レイが理想とする若くて野心に溢れたカップル)を探し出してくれたりと献身的ではあった。だがしかし、レイの望むタイミングではなかったというのが痛々しかった。それにClubも、レイが激昂して独断で退会されてしまって、ますます孤独に。だからこそ、なぜこの状況のままでいられるのかが不思議で不思議で。
そんな感じでもどかしいを通り越してイライラする夫婦になってしまった。。

閑話休題。レイ・クロックは兄弟からマクドナルドのシステムだけでなく”名前”そのものも奪い取ってしまう。確かに、惹きつける語幹てあるよね......ほんと観ていて略奪者か何かと憤慨したくなる一方で、ビジネスってこういうきれいごとだけじゃないもので成り立っているんだろうなって思わされた。

実際、過去の慣習や前例に従ってしか仕事をせず、新しいやり方を提案したところで受け入れられない創業者兄弟。そりゃね、新参者がやってきて自分たちが守ってきたものをぶち壊そうとしているかのような振る舞いは受け入れがたいのかなとも思うよ、確かに。でも一方で運営するだけでは赤字だし、補填しようにもレイに入ってくる収入は契約によって押さえられているし。より業績をよくしよう、改善して売り上げを伸ばそうっていうビジネス感を持つ人間は必要だったと思う。まぁ今後も企業として生き残っていきたければだけれども。実際私も、今までの方法を変えようとしない企業にいるからその点共感できちゃったりする部分もあるんだなこれが。

だからそこまでするか?というくらいの嫌悪感やフラストレーションを感じながらも、ビジネスマンとして会社を大きくしていくという野望があり、実際成し遂げた方法だから認めざるをえない......マクドナルド兄弟と締結した契約書を履行するためにしょうがなく自分で土地を買い上げリースする方法を取ったのだけれど、それが結局契約の抜け穴になったし、自分で思いついたわけではないにせよ、創業者兄弟から全てを奪い取り、”創業者”に成り上がったところを見るに確かに有能なビジネスマンであったことは言うに難くない。

これについては、監督がCutでのインタビュー中に、
脚本の前半ではレイ・クロックが同情的に描かれている。...(中略)...中盤を過ぎたあたりから、彼の行動を疑問に抱くようになる。...(中略)...そして、物語の終わりには、観客は共犯者に仕立てられたような気分になっている。
と言っていて、まさに私が感じていたことこれだったんだな。共犯者とまでは言えないけれど、どこか肩入れしたり共感してしまえる部分があるから。

リスクヘッジ”として(元)1号店の前に「マクドナルド」を新しく開店させたり、契約書にあえて記さなかった利益1%の支払いをバックレたり、奥さんを捨てて他人の奥さんに手を出すのはどうかなって思うよねー。あくまで私の中の脆弱なモラルに則って言わせてもらえればですけど。

本音と建前、ビジネスとしての成功のために何が踏み台になってしまうのか。自分は意識せず何を踏みつけてしまうことになるのか。目を背けたいけれど気付きになったな。

そういえば、レイは初めてマクドナルドに来店したとき、包み紙に挟んであるだけのハンバーガーにとても戸惑っていた。サンドイッチもハンバーガーもナイフとフォークで食べる文化だった、きっと画期的なシステムだったろうなと想像をレトロスペクティブに働かせて観ていた。(レトロスペクティブが言いたかっただけ)

 

46.ジョジョの奇妙な冒険\
原作未読......エピソードは色々省略されているながらも、映画としてのまとまりは感じられたかなというのが感想。原作がまだまだ続いていくから、続編を予感させるような作りにはなっていたよね......まだまだ小松菜ちゃんのでしろはあってもよさそうだなぁと思ったから。神木くんのスタンドもしっかり見たいしー。

伊勢谷さんは無駄にかっこいい。國村さんもかっこいい。あんどーなつのころからずっと好き。

多分通学路とか、バルセロナで撮ったんだろうなって思うんだけど、エキストラって現地募集なのかな?それにしてはしっかり日本人?アジア人?が十分量存在していた気がしたのだけれど......ま、調べるまでもないので疑問符でここに置いておきますが。

 

47.SHIROH
・RXシリーズだって知らなかった
・歌が多くて俺得
・上川さんてSHIROH顔
・声帯オバケことアッキーの実力を思い知らされる
・自分の声だけじゃなく、周りの声と合わせて成立することを知っているかのよう
・歌声の説得力......設定に何一つ負けてない
高橋由美子さんがいつ見てもかわゆい
秋山菜津子さん、ヅカ出身を思わせるような男前感そして何よりも女優
・でも後半は宗教観が強くなりすぎてあまり楽しめなかった
・果たして2人のSHIROHが望んだ世界になったのだろうか
・あれは生き返るフラグだと思いきや、見守る精霊()スタンスだったことがいちばんの驚き

 

48.ダイバージェントFINAL / ALLEGIANT(2016・米)
はてさて、果たしてこれの後編が制作される日は来るのだろうか? 

冒頭、前作までのあらすじを示してくれて、脳内で混ざり合っていたハンガーゲームと分離することに成功。いざ本編が始まると荒れたビルからで......そうそう、 結構えげつない攻撃されてたところで終わったんだっけ......とあらすじでは思い出しきれない記憶がいっぱい。

ハンガーゲームと違うとしたら、近未来の描写がありえそうでリアルに感じられることかな.......バトルシーンは都合がよすぎるからリアル感あんまりないね。特に壁の外から装備持ってこれてるんじゃほぼ無敵じゃね?勝負にならないよあんだけのハンデじゃ。。
というか、戦争を止めたいって言って戻ってきてるのに、(しょうがないとはいえ)遠慮なく撃って回ってるの矛盾だとは思わないのかしらねー。

これまですったもんだありながらチームを組んでここまで来たのだが、助ける謂われもあまり感じない人(兄)もいれば、性格の悪さからしょうがなくここまで引き連れてきた人(ピーター)もいた。だからこそ、序盤でトーリが撃たれてしまうことが本当に........本当に悔しかった。いやいや、敵が追いかけてきてるのに壁上ったくらいで喜び合うなよ!!せめて反対側に降りてからにしなよ!!!そこでカメラワークが丁寧に切り替わるから「あー撃たれちゃうんだな」ってわかってしまったじゃんかぁ!!!!んもお~~~~~~
トリスは2作目からキャラ変しちゃったけど、クリスティーナとかトーリとか、女性キャラ好きだったんだよねぇ。。だからこそこのシリーズを見続けられたともいう。。生きて欲しい人が死んでしまって、そうでもない人が生き残る......それってなんて不条理。

そんな世の中の不条理を描いていた一方、ファンクショレスのイヴリンと、アリージェントのジョアンナが柵一枚隔てて対峙するシーン。お互いに兵をつけていて銃撃戦が始まるのになぜかお互いは撃たれない。頭を落とした方が勝ちじゃないんか??(ヤンキーの発想)と思ったんだけれど、まぁトップを落とすと統率がとれなくなるからね。周りを減らしてまるっと屈服させる方が楽か。

今回のストーリーライン、すごくわかりやすくて、ピュア故に自分が利用されているとも知らない主人公、それを利用している大人、陰謀に気付いてしまうヒーローの三角関係のお話で、国境を越えてもこういうすれ違いはあるあるなのねぇーと。

遺伝子繁栄推進局(ビュロウ)にいるのは、辺境から攫われて記憶を消された子供たちがそこで成長したんだって推察された。そこにいる全員がその事実を知っているわけではないだろうけれど、それに関わっている何人かはそれについてはどうとも思わないのかな?不自由なく暮らせていたから?ここで放射能を浴び続けるよりははるかにいい生活を与えることができるから?ああいう共同体でいるのならば、確かに家族とかの意識が薄くなっているからあまり加害者意識を持つことなく実行できるのであろうか......自分も攫われてきたんだって考えたら結構ダメージ受けちゃいそうなものだけれどね。
これが関係しているのかはっきりとは分からないけど、やっぱりビュロウのトップのことを信用していない人たちが存在していて、その力を借りることができる。ここまでくると都合がよすぎと言えないこともない。

初めてビュロウに連れてこられたときに”未来”ってキーワードあったと思うんだけど、それってなんだっけ......どの時点を基準にしているのかわかんなくてさ。壁の中のシカゴと壁の向こうのこちら側の時間軸はズレてないのよね?あの箱が作られたときからは未来だって言いたいのかな?もう一回初めから見たい。いつか時間が取れたら。

テレビシリーズとして続けるのか、ここで製作が終わりになるのかわからない。。けど、どっちに流れてもいいような終わりにはなってたよね。ビュロウのデヴィットとの決着が付いていないことは気になっていたけど、ガスが撒かれて記憶がリセットさせられることは防がれたし、嫌われ者のピーターはおそらく爆発で吹っ飛んだし(希望)、これで終わりならまぁ別にいいかなって。シカゴの人たちが解放されるっていう近未来くらいは実現するのかな?

......大胆すぎるストーリーの改変、この落ち着き方になるんだったら私は結構好きだったな*2

すごい今更なこと言わせてもらうと、シャイリーンとお兄ちゃん役のアンセル・エルゴートって「きっと星のせいじゃない」で共演してたんだ??シャイリーンしか認識してなかった!!そして、小憎たらしいピーター、まさかのセッションのドラマーじゃんかぁ!!!!シモンズさんが強烈過ぎて忘れてたよ......通りでいけ好かなくて憎らしいのに目が離せなくなるはずだよ。。

 

49.関西ジャニーズJr.のお笑いスター誕生
今までのシリーズの中では一番好きだったなぁー。笑えて泣けてハッピーエンドならぬインド映画風エンディングを迎える......はともかく、無理なく楽しめてよかったなぁ...て。
舞台の上での彼らを知ってるからなのかなんなのか、アイドルである彼らがお笑い芸人という似て非なる役柄だからなのかなんなのか、スクリーンで彼らを見るとちょっとこそばい気持ちになるのはなんなのだろうか。まるで弟の晴れ舞台を見に来た姉のようなむずむずする感情。。慣れてる子はさすが、舞台と映像の切り替えがうまくできてたなぁって思ったのである。小島くんがなぜかこなれてて地味にすごいなと感心もした。(正門氏も違和感なくてうまいと思ったけど)

今回1年ぶりに文ちゃんをスクリーンで見て思ったのだけれど、そこにいるのが自然な人だった。去年は、元ホスト役の文ちゃん...って若干ちらついていたこともあったんだけど。すごい舞台芝居が鼻についたわけでもなく、、、役柄も違うし、私の預けてるウェイトも違うと言ってしまえばそれまでなんだけど、監督に「おまかせで!」って言ってもらえるくらいの実力を発揮してくれる場であってよかったなぁー。
ピンクらくだ+磯部さんの画、3/4がハーフって、”関西”っていう枠を突き抜けてるぜって思ったり思わなかったり。

あとは長尾くんの後光と斗亜ちゃんの笑顔と、怜爾くんの影を追いかける作品だったのかなって*3
早くうちわを振り回すアイドル映画から脱却して、商業映画に呼んでもらえるようになりますように。そんな映画の舞台挨拶でかちんかちんに緊張しながら話してる姿の方が私は観たいよ?

まぁ、事情は分からなくもないけど公開2週目で1日2回上映、早朝夕方上映のみってのは勘弁してちょ。

 

50.ベイビー・ドライバー / Baby Driver(2017・米)
さて、ダイバージェントではいい役になり下がった(言い方)、アンセル・エルゴート。正直、ダイバージェントでは番手がそこまで高くなかったからあえて注目してなかったけど、結構面白そうな俳優さんだった。

というか、この映画自体がMVみたいだった。車のエンジン音、銃声が音楽の一部みたいだったし、演技自体も音楽に沿っているようだったしね。そりゃアメリカでのレートも高いわけですねぇ。クライムカーアクション...という分類はないだろうけど、爽快に楽しめる作品であると思う。前半はね。

後半は、チーム内がギスギスしたり(入れ替わり制だから特に絆も深くない)、計画実行を匂わせておきながら逃げようとしたり、ボスとなんやかんやあったり、逆恨みされて殺されそうになったりとバッタバッタと色んなことが起きるので正直疲れた...笑 バルト9の音響は私にはちょっと大きすぎるのだよ。。
とまあ、話を戻して、ドク(ボス的な人)はベイビーを解放しようとはせず、かといって危険になれば切り捨てようとしたのにもかかわらず、一般人の彼女を連れていることを見るや否や急に協力体制になって捨て身の攻撃に転じたのは意味が解らなかったし、そもそも、ベイビーがいくら彼女を危険に晒したくないからといって下手な嘘でごまかすだけにとどまらずなぜ視線を送ってしまったりするのだろう?外国の映画に多いよね......そこまでせんでも人の機微はつかめるのでは?と奥ゆかしいジャパニーズは思いますよ。ええ。

出会った頃はバイトに入りたてで借り物の制服だったデボラに制服ができたことで*4ベイビーとの関係がバレるし、「何もなければ25年はドライバーとして生きられる」の25年がベイビーの刑期だしでなんとなく伏線(と呼ぶのか?)が回収されていく感じは気持ちよかったな。

ベイビーが無口なのは耳鳴りや本人の性質ももちろんあると思うけど、養父が耳が聞こえないから言葉によるコミュニケーションをそれほど必要としてなかったというのもあるんだろうね。耳と足が不自由という、社会的に見たら弱者の家族がいたことで、いたずらに人を殺すことをよしとせず、証言に立ってくれる人たちから情状酌量が得られたりして。

それにしても、一番最後までやりあうのはドクなのがありがちだけど、今回はチームで仕事をしたことのある通称:バディがその役を担った。ベイビーがきっかけ作ったせいで、恋人で共犯者の通称:ダーリンが死んでしまったと恨み辛みを抱えて襲い掛かってくるのよね。ベイビーの大事な人を殺してやるっつってバイト先まで先回りして待っててー。やってもやってもどこからか涌いてくるので最終的にゾンビもの見てるくらいの気持ちになったよ。

 

51.エル / ELLE(2016・仏白独合作)
女は怖い。
(今年他の映画でも言った気がする)

観終わるまで全く意識してなかったけど、エルって人名じゃなくて英語で言うところのShe=ミシェルのことだったのね......拡大解釈して”女たち”それぞれを表していると考えられないこともない。

エロティック・サスペンス・スリラーという触れ込みだった気がするのだけれど、自分に害及ぼすものを自分で排除していく女性のお話だと思ってたのよねー。だから、レイプ犯見つけて自分で処分するのだとてっきり......話は逸れに逸れて驚きの着地点へ。

《登場人物》
①ミシェル:主人公。別れた旦那、変な女に捕まった息子、親友でビジネスパートナーと立ち上げた会社、その旦那との不倫。自宅でレイプ、社内ではそれを思わせるような動画流出事件。

②パトリック:隣人。ミシェルに気に入られていて、テーブルの下で誘われたりする。ミシェルに気があるの?ないの?一旦断ったのも、クリスチャンだからだと思ってたんだけどな......

③アンナ:友達でビジネスパートナー。旦那がミシェルと不倫しているが、その相手までは気付いていない。「高級ホテルのボディクリームの匂いがする」「(旦那が)浮気してる。脱ぎたてのパンツの匂いを嗅いだのよ」 

④リシャール:ミシェルの別れた旦那で、売れない作家。大学院生の若い彼女がいる。今も未練がなくはないが、ミシェルに嫉妬の上かき回されたり、強姦魔と間違えられて退治されそうになったりする。結局彼女は同姓の作家と自分を間違って付き合っていたことを知って破局

レベッカ:敬虔なクリスチャン。パトリックの妻。隣人のミシェルをレイプしたのが自分の夫だっていうのに謝らないところが、自分の責任範囲外だって認識してるからなんだ、さすがフランス人と思っていたのだけれど(偏見)。

⑥ヴァンサン:うだつのあがらない息子。パートナーは妊娠しているのにバイトを辞めてきてしまったり、母親とパートナーが言い合っていてもどちらサイドにもつけずにしょうもない男認定されている。母親が強姦されているところに出くわして、撲殺。これをきっかけに何かしら好転したのかしら。

⑦アイリーン:ミシェルの母親。ミシェルが父親(元旦那)を毛嫌いしていることを悲しんでいる母親。かと思えば、孫くらいの男を家に住まわせていて、「結婚する」だなんて抜かしている。ミシェルに伝えたところ高笑いされたうえ「殺してやる」って言われて憤慨。クリパの夜、脳梗塞で運ばれるも死亡。遺言で「父親に会いに行ってあげて」と残す。なんとなく明らかに金目当てっぽい若い男の口車に乗っているのも滑稽だなって思う一方、生涯現役でいられるのは羨ましい。ミシェルは母親カップルには横暴だったけれど、亡くなった後若い女をさっそく連れ込んでる男に向かって「この家は売りに出したからさっさと荷物まとめて」と言い放ったところは爽快だった。

⑧ミシェルの父親:連続殺人犯。敬虔なクリスチャンであったが、あるきっかけで近所の人たちを殺して回る。保釈却下されたところに、娘から面会要請があり、シーツで首を吊って自殺。それほど合わせる顔がなかったということなのか......父親に同情というよりは、父親にまで恐れられている(他に表現があるとは思うけど)ミシェルに末恐ろしさが倍でドン。

⑨ロベール:アンナの旦那。ミシェルと数回不倫。アンナがいないことを知っていてオフィスにやって来たり、生理中でもカークラッシュで脚を怪我していても*5どこ吹く風でミシェルを求めてくる。最終的にはアンナに家を追い出される。

⑩息子のパートナー:気の強いギャル。でも子供には愛情深い母親なのだけれど、当たりが強い。生まれた子が自分とヴァンサンの肌の色と違って、友人でシェアメイトと同じ象牙色なのだけれど、全然動じない。

⑪カート:会社のエンジニア。ミシェルと意見が対立することが多いことから、開発中のエロゲの顔をミシェルに雑コラして流したレイプ犯ではないかと疑われる。スキーに行くというところから、スキーマスクを被っていたレイプ犯と共通点がありすぎるということで。個人的にはフラグが立ちすぎていてすぐに犯人予想からは外れたけれども。笑

⑫ケヴィン:会社のエンジニア。ブルネット。ミシェルにどこか心酔している部分があり、違法行為込の犯人探しを手伝わされる。実はミシェルの過去をゲームに活かしたらリアリティが生まれるのではないか?と思って動画を制作した犯人。面白がって他の同僚が社内に流しちゃったんだって。クビにしないかわりに、局部をミシェルの前で露わにさせられる*6

......ほら、これだけの登場人物がいて結構不幸になっている気がしない?不幸を連れてくる女の話かと思ったよねー。

何が困ったって、序盤で顔を判別しきれてないから不倫してるんだってことにしばらく気付けなかったこと。

序盤からミシェルがレイプされるシーン。結構衝撃的で、しかも何度もリフレインするから私も眉を盛大にひそめるわ、隣の女性は口元に手を置いてしまうわで精神的ダメージ大。 でも、現金なもので、犯人が明かされてからはサスペンス感が薄れて全然怖くないの。むしろ、何もアクションを起こさないミシェルの方が怖かった。
クリスマスパーティでも嵐の夜に窓ガラスを締めに来てくれたときにも誘うようなそぶりを見せていたし、窓から双眼鏡でパトリックの姿を探してはマスターベーションに耽っていたので多少気はあったんだろうけど......それにしても嫌いでない相手が犯人だったら別にいいやと思えるものなのだろうか。相手がわかってしまえば(もしかしたらその前から)そういうプレイだと思って楽しめるということに気付いてしまったんだろうか。

や、それならそれでいいのよ。打ち上げパーティの帰り道、「警察に話す」だなんて嘯いてみたり、家に入っても鍵は締めてなかったりでこれも誘っていたんだろう。なんとなく来訪がありそうな予感はしていたのよ。実際同じように侵入してきてレイプされる(のようなプレイ)。の途中に息子が帰ってきてしまって撲殺してしまう。
ミシェルはここまで狙っていたんだろうか?としたら何のために??こわい!!

この事件の前後に、不倫関係の清算、息子との関係修復、息子とそのパートナーとの関係、親友との関係などなど色んなものがまるっとうまく行くようになったんだよね。
ヴァンサンは何かが吹っ切れたように小物感がなくなったし、アンナも旦那を追い出して部屋を引き払って「一緒に住もうよ」とミシェルに提案するし、息子のパートナーとの関係も良くなっているし、元旦那の彼女はさっさと破局してるしで女の強さを感じたよね。

息子は息子で、何らかの事情で子供を受け入れられないパートナーの同居人のために”父親”を引き受ける気概でいたからあんなにも頑なに自分が父親だなんて言い張っていたんだなぁ。ちょっと見直したよ。

最後に、映画終盤に隣人妻のレベッカが言い放った「夫の相手を受け入れてくれてありがとう(曖昧)」。はっとしてゾッとした。全てを知っていたのだ。夫の性的欲求も、ミシェルがそれを受け入れたことも。(自分ももちろんターゲットだったからそうなんだろうけど)
知っていたから夫を殺されても、レイプ犯だってことがバレても何も言わなかったんだ。しかもそんな性的嗜好の夫のパートナーが敬虔なクリスチャンということが倒錯も倒錯で。こんな映画確かに制作国も女優も限られるわって思ったよね。”外国映画”としてだからこそ受け入れられるし、許されるのかもしれない。

ネタバレまみれの感想書いといてなんですが、伏線が回収されていくところが面白いので楽しめそうな方はぜひ劇場で見ていただきたいです。

*1:というか、売り込みに失敗した先で当時の商品を笑われたという表現の方が正しいのかな

*2:ただし原作を先に読んでいたら絶対受け入れられなかった自信もある

*3:曲解

*4:カセットとセットだけど

*5:屍姦プレイで楽しんだらしいよ

*6:レイプ犯が割礼していたことから、ユダヤ系なのではないかと犯人像を予測して問い詰めた冷静なミシェルがさらに怖い←これで動画の犯人とレイプ犯が別人であることが明らかになった